呑気な寝息をたてているライルの体にどこも傷がないのを確認すると、ヴィンセントとアースティンは先に出た者たちの名前を呼んだ。
しかしどこからも反応がない。
「アルルカン!・・・・レイン!ロゼット!ヴェルド!?」
「ミヤビ君、ヒューゲン君!」
アースティンとヴィンセントは嫌な予感に顔を見合わせた。
「これはフラグですかね」
「そうっぽいねぇ」
二人はライルを引きずりながら、あきらめたように玄関の扉を開いた。
時刻はもう明け方に近いだろうに、黒い森はまだ暗雲の空を背負っている。
それなのに二人はまぶしさに目を細めた。
ヘリの照明が、三人を強く照らし出していたのだ。
立ち並ぶジープに白いテント。そして武器を構える、白い防護服を着た集団。
そのどれにも、本社のロゴマークが見えたが、特にヴィンセント達の仕事ぶりをほめる為に集まったというわけではないようだ。
「り・・・・りゆに・・おん」
二人の肩に担がれたまま、ライルは何かにうなされるように呟いた。
アースティンはため息をついた。
「決めたよヴィンセント君」
「なんです?」
「僕、転職する」
「お供しますよ」
群がる白い防護服を最後に、彼らの記憶は途絶えた。
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門が閉ざされたあとも、怪物二人はまだそこにいた。
「感染区間から脱出した、貴重なサンプルを本社が人間扱いするわけないのに・・・・ヴィンセントが実験動物にされていたら怨むからね、ディーベクト」
扉も閉まっちゃったし、どうしようかな。と緊張感のない顔に戻ったグリモアはぼやいた。
「安心しろ、あれで悪運の強い奴らだ。どうとでもするさ」
ディーベクトは閉まった扉をたたく。
「本社の奴らは、同じ間違いなら幾らでも繰り返す。向こうに蒔いた種が芽吹く時まで、俺たちはラファエル嬢でも勧誘していればいい」
グリモアは一つため息をつくと、電車に入りアタッシュケースを見つけだした。
中には、まだ少し中身が残っている抗体のアンプルが入っていたが、それをブーツで粉々に砕いたあと、グリモアは残忍な笑みを浮かべてこう言った。
「じゃあ、そのあと世界征服だね」
fin
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